4〜6年伐採竹の持続可能性について
竹フローリングの製造現場にいると、原料となる竹の伐採年齢について質問を受けることが多い。一般的に、竹は4〜6年で伐採されることが最も多く、この年齢帯の竹がフローリング材として最も安定した品質を持つとされている。だが、このサイクルが本当に持続可能なのか、そして環境や品質にどのように影響しているのかを具体的に理解している人は多くはない。ここでは、製造現場の視点から4〜6年竹の伐採サイクルがどのように成り立ち、それが竹資源の循環にどのような意味を持つのかを整理してみたい。
竹は植物の中でも成長速度が群を抜いて早く、モウソウチクの場合、成長期には一日で数十センチ伸びることもある。伐採後も根茎が生きているため、伐採=伐倒ではなく、むしろ更新のきっかけになる特徴を持つ。4〜6年が伐採適齢とされるのは、繊維組織が十分に成熟し、密度が安定し、含水率が落ち着く時期だからだ。これより若い竹では繊維が柔らかく、製板時の収縮が大きくなり品質が安定しない。逆に7年以上経った竹は内部が脆くなり、加工工程で割れやすくなる。
竹山での管理方法としては、毎年一定割合を伐採し、新たに出てくるタケノコを更新材として育てるサイクルが確立されている。これにより、同じ竹林が長期にわたり原料を供給し続けることが可能になる。4〜6年伐採は、このサイクルを保つ上で最もバランスの良い期間であり、量と質を両立できる点で現地生産者にとっても現実的な管理方法となっている。
製造現場で扱う竹片を観察すると、伐採年齢の差は加工性に直結している。4〜6年の竹は繊維が均一で、ストランド工程でも均質な密度で圧締しやすい。樹脂の浸透もムラが出にくく、最終的な板材の寸法安定性が高い。一方、年齢が若い竹を混ぜると、圧締後の反りや膨らみが増え、乾燥後の収縮差も大きくなるため、仕分けや廃棄の割合が増える。また、年数が経ちすぎた竹では内部の乾裂が圧締時に広がり、強度不足や表面の細かな割れにつながることがある。
持続可能性の観点では、4〜6年周期の伐採は竹林環境の維持に適している。過密な竹林を放置すると光が十分に入らず、地表の植物が育たなくなる。そうなると土壌流出のリスクが高まり、竹林自体が弱ってしまう。計画的に伐採することで竹林内に光が入り、下草が育ち、根茎の呼吸も促される。それにより、新たに生えるタケノコの成長も安定する。竹は伐採されることでむしろ竹林が健康に保たれ、長期的に安定した供給が可能になるという特徴がある。
伐採年齢の管理は現場の労力も関わる。竹林を管理する生産者は、毎年竹に年輪の代わりとなる白粉(しらこ)や節周辺の模様の変化を見て、1年〜6年の竹を区別している。4〜6年のものだけを選び、1〜3年の若竹や7年以上の老竹を選別する作業は決して単純ではない。こうした選別精度がそのまま原料品質に影響し、工場での加工効率にも関わる。原料の良し悪しは最終製品の品質差として現れるため、現地生産者との連携が非常に重要になる。
環境負荷の観点からも、竹は木材に比べ再生速度が速いため、森林資源に代わる素材として注目されてきた。竹林は伐採後も根を残すため、CO2吸収能力を失わず、土壌の固定力も維持される。木材のように根ごと伐採し、植え戻しに時間を要するという構造とは異なる。4〜6年伐採は竹林に必要な循環を維持しつつ、自然に無理のない範囲で資源を利用する仕組みと言える。
製造現場では、4〜6年竹の中でもさらに選別が行われる。硬度や色調のばらつきを抑えるため、産地や山の向き、土壌の状態なども確認し、可能な限り均質なロットで加工する。竹は同じ年齢でも生育環境により密度が異なるため、原料の段階での仕分けが欠かせない。これにより圧締後の密度ムラが減り、表面加工や塗装でも安定した仕上がりが得られる。
さらに、乾燥工程では伐採年齢に応じた調整が必要だ。4〜6年竹は乾燥後の収縮が比較的安定しているが、それでも季節により含水率の変動が出るため、窯の温度と時間を細かく調整する。特に冬場は含水率が低く、乾燥を急ぐと表面割れが起こりやすい。逆に湿度が高い時期は内部まで水分が残りやすく、乾燥不足は後工程に影響する。こうした調整は熟練が必要で、実際には温湿度や竹質の変化に合わせて日ごとに設定を変えることもある。
持続可能性を語る上で見落とされがちな点に、人の労力も含まれるということがある。竹の伐採年齢を管理し、竹林を守り、原料として適した状態を保つためには、現地の人たちの継続した作業が欠かせない。計画伐採は持続可能性に直結するが、そのための手作業や管理は竹材の価値を支えている要素でもある。
竹フローリングとして加工される段階でも、4〜6年竹の安定性は大きなメリットになる。寸法変化が少なく、硬度が均一なため、施工後の反りや隙間の発生リスクを抑えられる。ストランド竹でも積層竹でも、適齢竹を使うことで内部応力が安定し、長期間の使用での変化が穏やかになる。工場側でも扱いやすく、最終品質が安定しやすいため、現地から工場、ユーザーまで一連の流れがスムーズになる。
竹の資源利用に関しては、単に早く育つという理由だけで環境に良いとされるわけではない。適切な年齢で伐採し、竹林が健全な状態を保つことで、継続的に資源を供給し続けることができる。4〜6年伐採は、そのサイクルを成り立たせる中心となる年齢帯であり、竹フローリング製造においても品質や安定性が確保しやすい重要な材料となる。
製造現場で日々竹材に触れていると、4〜6年という年齢設定は単に慣習ではなく、品質と持続性の両面から見て理にかなっていると感じることが多い。自然環境のサイクルと工業製品としての要求品質を両立させる上で、この年齢帯の竹は最も安定したバランスを持っている。竹を資源として長く利用していくためには、こうした適切な循環を続けることが欠かせないと考えている。
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